2025.07.16 17:00
共産主義の新しいカタチ 72
現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)
モースの「贈与と交換システム」
モースからレヴィ=ストロースへ②
「交換システム」が社会全体の中軸に
そもそも、実証主義哲学者オーギュスト・コントの流れを汲むデュルケーム社会学の課題は、デュルケームは社会の構造を集合的全体としてしか見なかった、その考え方を直接に受け継いだのが、マリノフスキーのライバルだった社会人類学のラドクリフ=ブラウンでした。
マリノフスキーはむしろ、社会を構成し営んでいる個々人の振る舞い方を精査するべきだと主張しました。レヴィ=ストロースの「師」にあたるモースもどちらかと言えばマリノフスキーの考え方に近いと言えます。ただし、マリノフスキーの場合は、「クラ(祭器)の流通」という具合に、どちらかと言えば経済的な側面に比重が置かれていました。
これに対してモースは、「交換・贈与」というシステムないしメカニズムの原理的な解釈にポイントが置かれています。『現代思想の109人』(青土社)から「モース」の稿の記述を引用してみましょう。
レヴィ=ストロースの注目するモースの方法の傑出した点は、全体的社会事実をシンボル=システムとして処理するところにある。これは勿論、デュルケムに萌芽があるわけだが、モースに特に明確なのは一切の社会生活は諸集団間、諸個人間の交換システムに還元され、構造言語学の方法に通ずる研究だということなのである。
モースは提供・受容・返礼の三つの義務を伴う交換現象が、共同体成員の社会的結合関係(共同・競争・敵討ちなど)を維持・強化し、この交換のシステムが社会の法的・宗教的経済的な全体性の中に中軸として存在し、その中で共同体成員の行動の義務(例えば贈与)やそれに対する関心は神話や空想に象徴され、表示されることを明らかにした。だから人々の自己の行為に対する関心は、集合的表象の中に集約される。
この考え方は、レヴィ=ストロースの構造主義の中に見事に再現される。その意味で、モースの大なる影響とは先ず構造主義の中に見ることができるし、また神話学、宗教学にその消し難い刻印を残していることが判る。(同「モース」栗本慎一郎=執筆)
このようにレヴィ=ストロースも、先人に多くを負っているのです。以下の「資料」には、モースがいかにレヴィストロースの「思想的源流」となったかについての説明を引用します。
◆資料
▼レヴィ=ストロースの思想的源流とモース
「レヴィ=ストロースは自分が影響を受けたものとしてマルクス主義、地質学、精神分析を挙げている。この三つは、いずれも深層を解読しようとする点で共通している。彼が次々に提示した人間についての新しい事実は、すべてその独自の解釈(解読)作業によると言えるだろう。
レヴィ=ストロースはデュルケムとモースからその社会学理論を受け継いでいる。特にモースの社会的統一の見方には大きな影響を与えられており、親族論はそれを基礎につくられたと言える。モースは社会的統一が、「交換」によって成立していると考えた(『贈与論』)。
すなわち物品と奉仕、言葉とシンボル、そして女の交換である。この交換体系の基礎となっているのは、互酬性の規則-贈与に対する返礼の義務-である。レヴィ=ストロースは互酬性の原理が親族体系を理解する鍵になると考える。親族体系は婚姻を通して女の交換を組織する様式だからである。この体系の前提条件として近親相姦禁止の規則がある。
男が近親の女と婚姻することが許されなければ、彼は近親外の女を娶らざるを得ず、近親の女は近親外の男に与えざるを得ない。近親相姦禁止の規則は人間の社会である限り例外なく存在する。こうして社会組織にその基礎を与える交換の体系がつくられる」(青土社『現代思想の109人』より)
★「思想新聞」2025年6月15日号より★
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