世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

文氏、金氏と「革命の聖地」・白頭山頂に立つ

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 9月17日~23日までを振り返ります。

 この間、南北首脳会談(18日~20日)。東京都、ヘイト規制条例案を議会に提出(19日)。自由民主党総裁選で安倍晋三氏三選(20日)。トランプ政権、新たな「国家サイバー戦略」を策定、発動(20日)、などがありました。

 今回は3回目の南北首脳会談を取り上げます。

 9月に入り、南北そして米国が大きく動きました。まず5日の韓国特使団と金正恩党委員長の会談(平壌)です。そこで金正恩氏は、トランプ氏の一期目の任期内(2021年1月まで)に敵対関係を清算し、非核化が実現できたらいい―、と発言しました。それに対してトランプ大統領は6日、モンタナ州での集会で演説し、正恩氏の発言を「素晴らしい」と評価したのです。

 文在寅大統領と金正恩党委員長との3回目の会談は平壌で行われ、19日には、「平壌共同宣言」が合意。その内容は、

(1)北朝鮮北東部にある東倉里(トンチャンリ)のミサイルエンジン実験場とミサイル発射台の専門家監視の下での永久廃棄。
(2)米国が相応の措置を取れば北朝鮮は寧辺(ヨンビョン)の核施設廃棄など追加措置を取る用意がある。
(3)金正恩氏の早期ソウル訪問。
(4)南北軍事共同委員会を早期に稼働させ、偶発的な武力衝突防止に向けて協議。
(5)条件が整い次第、北朝鮮での南方経済協力の開城工業団地と金剛山観光事業を正常化。
(6)年内に南北間を結ぶ鉄道と道路の着工式を行う。
(7)離散家族再会のための常設施設を金剛山に早期開所。
(8)2032年の夏季五輪の共同開催誘致に向け協力。

 といったものです。

 米政権は、完全な非核化実現には「核計画の全容申告」が不可欠としていますが、文言としては含まれていません。さらに20日、文氏は金正恩氏に誘われて中朝国境にある白頭山頂に立ったのです。

 白頭山は「朝鮮民族発祥の地」といわれますが、政治的には金正日総書記が誕生した「革命の聖地」とされている所です。韓国の保守派が「政治宣伝に利用される可能性がある」と批判したのは当然です。北朝鮮中心の統一に向かうとの印象を与えるからです。

 文氏は21日の記者会見で、非核化について「北朝鮮との合意文に盛り込んでいない内容がある」と述べましたが、核開発の全容申告に関することとみられます。米韓首脳会談(24日予定)が注目されます。

 ポンペオ国務長官は19日、「(北朝鮮が示した)重要な約束に基づき、米国は即座に米朝関係を転換させるための交渉につく用意がある」と語りました。
 「重要な約束」とは、非核化の期限のことです。米朝は、年内の首脳再会談実現に向けて動き出しました。