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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

国連・北制裁パネル廃止へ、ロシアが拒否権行使

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、41日から7日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 北朝鮮の「火星16」の試射成功(42日)。台湾・馬英九氏、広東省トップと面会(2日)。台湾東部・花蓮県沖を震源とする地震、震度6強(3日)。フィンランド、約300億円のウクライナ支援協定締結(3日)。米・イエレン財務長官、中国・李強首相と会談(7日)。イスラエル軍、ガザ地区南部から地上部隊の大部分を撤収(7日)、などです。

 北朝鮮が43日、中距離弾道ミサイル「火星16」を同月2日に試射したことを明らかにしました。
 即時発射が可能な固体燃料エンジンを使う新型弾でした。

 固体燃料を使う中距離ミサイルの発射は1月にも実施しましたが、今回は金正恩(キム・ジョンウン)氏が立ち会い、「火星16」という名称も明らかにしており、完成に近づいていることが分かります。
 いずれにせよ明確な国連決議違反であり、新たな制裁の加重が必要な事態です。

ニューヨークの国連本部

 ところが、北朝鮮に対する制裁の履行状況を調べる安保理の専門家パネルが、4月末で廃止となる公算が確実になってしまいました。
 専門家パネルの委員の任期を1年延長する決議案に328日、ロシアが拒否権を行使したため否決されたのです。パネルが設置されてから初めてのことでした。

 内容は日米など13カ国が決議案に賛成。しかし中国が棄権し、北朝鮮と関係を深めるロシアは拒否権を発動、一線を越えたと言わねばなりません。

 北制裁パネルは2009年に設置されています。委員は日米韓などの輸出入管理や核不拡散の専門家8人で構成されています。
 これまでパネルは、北朝鮮や加盟国の決議違反を監視し、報告書を年2回提出してきており、大きな役割を果たしてきました。
 例えば、北朝鮮が海上で物資を密輸する「瀬取り」の実態を明らかにしています。

 パネルが廃止になっても、さまざまな裁決議が失効するわけではないのですが、監視体制が緩むことは避けられません。
 日米英仏韓が共同声明で、ロシアの拒否権行使を「責任ある国連加盟国の行動ではない」と厳しく非難したのは当然のことでした。

 ロシアは2017年までは制裁決議に賛成して、専門家パネルの延長の決議にも異を唱えたことはありませんでした。
 しかし今回態度を一変させたのは、国際協調よりも急接近した北朝鮮との関係を優先させたからに他なりません。

 制裁決議は北朝鮮との武器取引を禁じています。しかしロシアは昨年来、北朝鮮からミサイルなどの供与を受け、ウクライナ侵略に使用しているといわれています。専門家パネルはこのような露朝間の取引を調べていました。

 米国政府や韓国政府によると、20239月から20242月に、北朝鮮からロシアに輸送された兵器積載コンテナは延べ1万個以上で、砲弾数換算で推計270万~300万発以上にも上るといいます。

 これはロシア国内の砲弾年間生産量およそ300万発(NATO〈北大西洋条約機構〉調べ)に当たる多さであり、現在も北朝鮮の対ロシア武器供与は継続中と見られているのです。

 ロシアのこのたびの行動は北朝鮮との武器取引の実態が明らかになるのを避けたかったのでしょう。
 専門家パネルの延長決議案に賛成する条件として対北制裁に期限を設けるよう求めていました。

 ロシアは、対北制裁の更新時に拒否権を発動し、制裁を終わらせる狙いだったのではないかと考えられます。

 ロシアの「暴挙」が続いています。国連の機能破壊が進んでいることはこれまでも指摘されてきましたが、今回の行動は「とどめを刺した」ともいえるものだったのです。



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