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ダーウィニズムを超えて 40

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

四章 創造神話と新創造論

(二)宇宙卵の神話

 世界が一個の卵から創られたという神話が、世界各地に見いだされる。これは何を意味するのであろうか。主要なものを取りあげてみよう。

1)ユダヤ・キリスト教の天地創造神話
 創世記1章には、「地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた」とあるが、この文章の最後に用いられているヘブライ語の表現は、文字どおりに訳せば、「神の霊が巨大な鳥の形を取って、原初の大洋の上で卵を暖めていた」ことを意味すると言われる(*4)。

2)ヒンドゥー教の宇宙創造神話
 D・リーミング(David A. Leeming)、M・リーミング(Margaret A. Leeming)の『創造神話の事典』は、インドの創造神話について、次のように説明している(*5)。

 シャタパタ・ブラーフマナ(Satapatha Brahmana)に出てくる神話によれば、世界創造以前には、ただ原初の海があった。海は命を生むことを欲したので、強く望んだところ、十分に暖かくなって黄金の卵が生まれた。この卵は1年間水の上を漂っていたが、1年後、その中からプラジャーパティ神(Prajapati)が生まれた(原人プルシャはプラジャーパティの化身である)。プラジャーパティは、卵の殻を破って出た後、その殻の上にもう1年間ほどいて、それから口を開いた。その口から出た言葉が大地となった。その次の言葉が天となった。また別のいろいろな言葉が季節になった。

 最古のウパニシャッドであるチャンドグヤ・ウパニシャッド(Chandogya Upanishad)にも、卵の物語があるが、同書ではプラジャーパティは創造神ブラフマー(Brahma、梵天)となっている。ブラフマーは最初に海を創り、その中に種子を一粒まいた。その種子はやがて卵に成長した。それをブラフマーは二つに割った。割られた卵の金の半分から天空が、銀の半分から大地が生じた。ついであらゆる森羅万象が造られた。卵の中で瞑想(めいそう)するブラフマー(プラジャーパティ、プルシャ)、および割れた卵からの天地の創成を図44と図45に示す。

3)中国の盤古神話
 D・リーミング、M・リーミングの『創造神話の事典』は、中国の宇宙卵からの創造を次のように説明している(*6)。

 初めに巨大な卵があり、中には混沌があった。それは陰と陽——男女、静と動、冷と熱、湿と乾の混ざり合ったものであった。この陰陽の中に盤古がいた。やがて卵の中から盤古が現れた。盤古が生じてから18000年、盤古はどんどん大きくなり、天と地が次第に分かれるようになった。清く、明るい部分は天となり、暗い濁った部分は地となった。そして天と地は遠く隔たり、現在のようになった。

4)ギリシャの宇宙卵神話
 リトルトン編の『神話』はギリシャの宇宙卵神話を、次のように説明している(*7)。

 ヘシオドス(Hesiod)の著作にあらわれる創造神話によれば、女性神カオス(Chaos)が海を造り、その波の上で踊った。踊りから生じた風によって物質ができた。カオスはその物質から巨大な蛇を造った。カオスは鳩の姿になって巨大な卵を産み、蛇がそれを孵化(ふか)した。この原初の卵から万物が生じたのである。図46にギリシャ神話における宇宙卵の孵化を示す。

 オルフェウス教(Orphism)の創造神話によれば、時の神クロノス(Chronos)は銀の宇宙卵を造った。その卵から最初の神パネス(Phanes)が生まれた。パネスは自分の体から娘のニュクス(Nyx, 夜)を造り、そしてニュクスと交わり、天地のすべてのものを造ったのである。

5)エジプトの宇宙卵神話
 リトルトン編の『神話』はエジプトの宇宙卵神話について、次のように説明している(*8)。

 ヘルモポリス(Hermopolis)神話によれば、世界が存在する前、原初の海の中に四組の男性神と女性神のペアのオグドアド(Ogdoad, 八柱の神)があり、男性神と女性神の争いによって、原初の盛り土ができた。原初の盛り土の中に宇宙卵が含まれていた。卵が割れると、盛り土は「炎の島」となり、そこから生まれたばかりの太陽神が空に上って天に座した。これが最初の日の出とされる。かくして宇宙が誕生したのであった。宇宙の誕生を大激変とするヘルモポリス神話は現代のビッグバン理論をほうふつとさせる。

 他方、ヘリオポリス(Heliopolis)神話によれば、原初にベヌと呼ばれる聖なる鳥が現れた。ベヌは太陽神アトゥム(Atum)の化身である。鳥が海の上で鳴くことによって、ゆらぎが生じて創造が始まった。(アメン神[Amun]が海の上で、ガチョウのように鳴くことにより、宇宙的な激動が生じたという説もある。)鳥が原初の盛り土にとまって卵を産んだ。卵がかえると、そこに太陽神アトゥムが現れた。アトゥムは男女の神々を生み、宇宙を創造したのである。ギリシャのヘロドトス(Herodotus)はその鳥を火の鳥(フェニックス)と記した。エジプト神話における宇宙卵の孵化と太陽神(火の鳥)の出現を図47に示す。


*4 The Interpreter’s BibleNew YorkAbingdon Press, 1952Vol.1 466-67.には次のように記されている。
 創世記12節は、神が秩序あるものに変えたカオス(混沌)について述べている。しかしながら、この節は、この章の他の部分とは次の点で異なっていることに注目すべきである。
 ① 発せられた神の言でなく、神の霊が創造の動因とされていること。
 ② 神の霊がカオス(混沌)を抱いている——英語版では、その真の意味は、「覆っている」(wasmoving over)と解釈されている——という文言の根底にあるのは、あたかも鳥が卵を抱くように、抱きかかえている霊によって、宇宙卵が孵化されたという考えである。それは全体の物語とは異質なものである。
*5 DA・リーミング、MA・リーミング、松浦俊輔他訳『創造神話の事典』青土社、1998年、5052頁。
*6 同上、208頁。
*7 C. S. Littleton, general editor, Mythology, 137.
*8 Ibid., 15-16, 30.

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 次回は、「宇宙卵の神話②」をお届けします。


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