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脱会説得の宗教的背景 13
福音書の記述は実際のイエスの史実ではない?

教理研究院院長
太田 朝久

 YouTubeチャンネル「我々の視点」で公開中のシリーズ、「脱会説得の宗教的背景/世界平和を構築する『統一原理』~比較宗教の観点から~」のテキスト版を毎週火曜日配信(予定)でお届けします。
 講師は、世界平和統一家庭連合教理研究院院長の太田朝久(ともひさ)氏です。動画版も併せてご活用ください。

福音書の記述の“誤り”について
 また、福音書の記述の誤りという問題があります。

 洗礼ヨハネが“悔い改め”を迫ったことに対して、マルコ伝は「預言者イザヤの書に……書いてあるように」(123)と述べますが、イザヤ書ではなく、マラキ書の引用です。

 マルコ伝2章にも誤りがあり、イエスの弟子が麦畑の穂を摘んで食べ、それをパリサイ人が非難した時、イエスは旧約聖書を用いて弟子を擁護しました。
 イエスは「アビアタル」(マルコ226)と語りますが、アビアタルは誤りで「アヒメレク」(サムエル記上21章)です。その他にも、イエスが語ったとされる言葉に誤りがあります。

 多くの問題が提起され、福音書はイエスの“史実”を正確に伝えた文書なのか、疑問が生じます。
 その後、「様式史」「編集史」という学問が登場し、福音書は実際のイエスの史実(史的イエス)を正確に伝えた書物ではなく、イエスをメシヤと信じさせる目的を持って、イエスの語録集(ロギア)や伝承を集めた福音書記者が、宣教(ケリュグマ)のイエスの姿を編集した書物だと結論付けざるを得ないのです。

 ルドルフ・ブルトマンは「私達はイエスの生涯と人となりに就いて殆んど何も知る事が出来ないと考えている」(『イエス』12ページ)と述べ、様式史研究は、「イエス伝への唯一の資料である共観福音書の性格はいまや、イエスの伝記が不可能であることを、明らかにした」(エドガー・V・マックナイト著『様式史とは何か』70ページ)と結論付けました。現代の聖書学は福音書に“霊感性”があるかないかという次元の話ではなくなりました。福音書は聖書批評学の進展に伴い、多くの疑義が提起されました。

 古屋安雄氏(国際基督教大学教授)は「イエスは神の子であると信じる」という設問に対し、信徒が71%なのに、神学を勉強した本部職員牧師は54%になっていることを紹介しています(『激動するアメリカ教会』ヨルダン社、45ページ)。

(続く)

※動画版「脱会説得の宗教的背景 第4回『リベラル』と『福音派』との和合(新約聖書学)」はこちらから