青少年事情と教育を考える 26
「家族一緒にいてもスマホ」でいい?

ナビゲーター:中田 孝誠

 「インターネットと親子関係に関する意識調査」という調査の結果が7月に公表されました。日本、アメリカ、中国、韓国の小中学生(各国2千〜4千人)を対象に、昨年9月〜11月に行われた国際比較調査です。日本の調査は、独立行政法人国立青少年教育振興機構が行いました。

 日本の小中学生は「親とよく話をしている」「親と話すのが好き」という回答が9割に上り、4カ国の中で最高でした。「親と一緒にテレビを見たり、出かけたりすることは多い」も最も高い割合です。日本の子供たちは親と一緒にいる時間が好きだというわけです。

 また、「親は、私を時々叱る」「ほめる」の割合も約6割と高く、こうした数字を見る限りは日本の親子関係は決して悪いようには見えません。

 ただ、「家族が一緒にいてもそれぞれがスマートフォンを操作している」ことが「よくある」「たまにある」という小学生が57.5%、中学生が65%で、4カ国で最も高い割合になりました。家族のだんらんという言葉が死語になりつつありますが、子供の発達にとって大切な家族のコミュニケーションがスマホで遮(さえぎ)られるということになりかねません。
 ちなみに、親と話をしようとすると、親から「時間がない」「いま忙しい」などと言われることがあるという割合も、小学生44.1%、中学生36.5%で、こちらも4カ国で最高でした。

▲「家族が一緒にいてもそれぞれ自分の携帯電話やスマートフォンを操作している」/国立青少年教育振興機構「インターネット社会の親子関係に関する意識調査」より
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 ネット依存など依存症の治療を専門とする樋口進医師(国立病院機構久里浜医療センター院長)は、ネット依存を予防するためには家庭の中でインターネットをしない時間をつくる必要があるけれども、本人だけではなく親もスマホをしない時間をつくることが大事だと述べています。
 「家族が一緒にいてもスマホを使っていて会話がない」という状況を改善することが、依存の予防につながるというわけです。

 スマホの使い方にルールを設けたり、ネットの危険性を教えることは、今後ますます重要になってくるでしょう。それとともに、ネット社会であればこそ、家族の関係性を意識して大切にする必要があると思います。