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コラム・週刊Blessed Life 278
G7からBRICSの時代へ?

新海 一朗

 8月22日から24日まで、南アフリカ共和国のヨハネスブルグで、BRICSサミットが開催されました。
 「BRICS」は、2000年代以降に著しい経済発展を遂げた4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の総称として、経済分析の中で2001年に「BRICs」と呼ばれるようになったのが始まりですが、その後2009年からBRICs4カ国は毎年首脳会議を開催し、2011年に南アフリカ共和国が首脳会議に参加した後は、5カ国を「BRICS」と総称するようになりました。

 今回の822日からの会議は、特に、世界の関心と注目が集まり、大きな話題となりました。その理由は、BRICSが基軸通貨であるドルから離れる姿勢を明確にしたことであり、アンチ・ドル経済圏形成を目指す独自路線で進むことを世界に示したことにあります。

 そのような姿勢を示した背景を考えてみましょう。
 例えば、IMF(国際通貨基金)が出したデータによれば、1995年時点において、G77カ国のGDP(国内総生産)が世界GDP44.9%であったのに対して、2023年時点では29.9%にまで落ちています。

 それに対して、BRICS5カ国のGDPは、1995年時点では世界GDP16.9%に過ぎなかったのが、2023年時点では32.1%に上昇し、BRICSGDPG7GDPを超えてしまっているのです。このような数字を見ると、経済発展の勢いがBRICS陣営の方にあることは明白です。

 さらに、BRICS5カ国だけで、世界人口の40%を超えています。そのような状況から見て、新たな加盟国がBRICSサイドへと流れていく趨勢(すうせい)を避けることはできないでしょう。

 プーチンは、BRICS加盟国間の貿易では、米ドルを自国通貨へ切り替えることを言及しています。
 そして「われわれの経済関係の脱ドル化という客観的かつ不可逆的なプロセスは勢いを増している」と述べています。

 今回のサミットでは新たな加盟国が発表され、エジプト、サウジアラビア、イラン、アルゼンチン、エチオピア、UAE=アラブ首長国連邦の6カ国が正式な加盟国に決まりました。
 従って今後は、BRICSサミットは11カ国の参加によって実施されることになります。

 親米的な姿勢を貫いてきたサウジアラビアが正式にBRICSの一員になったということはまさに驚きです。サウジアラビアは米国を見切ったのでしょうか。

 BRICSの共通通貨まで検討していこうというBRICS版「EURO(ユーロ)」のような発想まで出てきているようですが、どうなっていくのか、全てはこれからです。
 このような反米的な動きが何を意味するのか、注目していかなければなりません。

 中国もロシアも冷静に見ると、問題は山積みです。中国経済は、実際のところ崖っぷちです。経済政策はことごとく失敗しています。ロシアもウクライナ戦争を抱えて、国内の情勢は読めない状況になっています。
 南アフリカやブラジルも国内は問題が多く、簡単ではありません。
 BRICSが経済成長してきたことは事実ですが、「これからはBRICSの時代である」と楽観的に述べることはできません。

 ただ、ここで言っておかなければならないことは、ドル覇権の衰退は不換紙幣(担保資産のない紙切れ経済)としてドルを刷りまくった経済の過ちが問題となっていることです。
 金本位制に戻る金融革命が水面下で起きていることを忘れてはなりません。