https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4161

コラム・週刊Blessed Life 273
中国経済の崩壊は不可避か?

新海 一朗

 中国経済は非常に危機的である、そういう論調の記事が多く見られます。
 まず、個人消費の低迷が顕著に現れており、その大きな要因として挙げられるのが、中国経済をけん引してきた不動産市場の悪化です。住宅が売れないとモノやサービスの消費も伸びないという相関関係があります。

 4月の住宅市場は、主要50都市の新築取引面積が前月に比べて25%減少、5月も1割落ち込んでいます(日本経済新聞610日付)。
 不動産市場悪化の原因は「家余り」で、マンションを造り過ぎて、幽霊マンションとなり、鬼城タウンとなっています。

 不動産バブルの崩壊で、中国経済の先行きは暗雲が立ち込めています。
 例を挙げると、マンションが売れないため、2021年の秋、中国の不動産大手の恒大集団(エバーグランデ)がデフォルト(債務不履行)に陥ったことが話題となり、世界を震撼(しんかん)させる出来事となりました。
 それ以降、中国の不動産市場は回復の兆しを見せていません。

 不動産バブルの崩壊は、世界最大の鉄鋼生産国である中国の経済に影響します。不動産投資の低迷で鋼材需要が落ち込むと、多くの雇用を生む製造業の中核を成す鉄鋼業の不振につながり、中国経済への打撃となります。不動産バブルの崩壊は、金融システムへの悪影響を与えることにもなります。
 このように、不動産バブルはさまざまな面へと影響を与え、中国経済の足を引っ張ることになります。

 中国株は1月後半のピークから6月までにおよそ20%の下げに達しており、投資家たちは他のアジアの国々に市場をシフトする動きが強まっています。
 中国の景気回復の遅れ、人民元安、米中対立などの悲観材料で、中国市場への魅力を失った投資家たちが中国離れを起こし始めているのです。

 一方、韓国、台湾の半導体メーカーは好調な見通しです。日本株はバブル崩壊後の高値を付ける好況感で踊っています。インドでは消費ブームが起きていて、株価は追い風となっています。
 アジアの国々が好調であるのに比して、中国の厳しい経済状況が目立ちます。

 アバディーンのアジア株担当投資ディレクター、クリスティナ・ウーン氏は、「中国以外のアジアには、確実に多くのチャンスがある。韓国はバッテリーと技術のサプライチェーンを構成する多数の企業へのエクスポージャーが得られる。台湾は台湾積体電路製造(TSMC)だけにとどまらず、日本は各分野のグローバルリーダーへのアクセスを提供する」と指摘し、中国にチャンスがあるという発言を控えています。

 これが、世界の投資家たちが見る現在の中国であるといえます。
 投資マネーが中国から逃げ出した分、アジアの他の国々へと投資マネーが動いたと判断することができます。
 リーマンショックの後、中国の共産党政権は不動産投資を増やし、高い経済成長を実現しました。
 現在、その不動産ビジネスの成長モデルが限界を迎えていると見るべきでしょう。

 中国は高度成長の終焉(しゅうえん)を迎えつつあります。
 共産党政権が維持され、国民も支持してきた理由は、まさに中国の経済成長にありました。経済が停滞し、国民生活が厳しくなると、習近平の独裁政権を支持する動きは止まり、不平不満、反対、反乱の動きが活発になります。
 経済の崩壊は、共産党政権にとって最悪の事態となることを覚悟しなければなりません。