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神様はいつも見ている 5
~小説・K氏の心霊体験記~

徳永 誠

 小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。

第1部 霊界が見えるまで
5. 母に神が降りる

 ある日、父と母はオートバイに乗って買い物に出掛けた。特に珍しいことではなかった。

 いつもは私も連れていってくれるのだが、この日は珍しく「あなたは今日はここに残っていなさい」と母は言った。
 その時すでに、母親なりに何か感じることがあったのかもしれない。

 私は不思議に思ったものの、両親の仕事の忙しさを知っていたので、特にぐずることもなく、「じゃあ、何をしようかな」などと思いを巡らせながら両親を見送った。

 どう過ごせばいいのか思いつかなかったので、私は両親が帰ってくるまで、いつも遊び場所としている近所の神社に行って時間を過ごした。
 祭りのときには露天市場が開かれ、金魚釣りやあめ屋などの屋台が並ぶ、どこの町でも見かける普通の神社だ。そこは普段からよく遊び場として利用していた場所だった。

 どれくらい遊んでいただろうか。気が付くと、父の弟である叔父の私を呼ぶ声がした。

 「お父さんが事故に遭った。早く病院へ行こう!」

 いつもの穏やかな叔父の表情はなく、張り詰めた空気の中で、顔が青ざめているのが分かった。
 私は漠然とした不安に包まれながら、叔父と共に病院に向かった。

 私は体を動かすのが好きで、どちらかといえば活動的で活発なタイプの子供だったが、この時は叔父の緊迫した気配に気圧され、黙ったままついていった。

 「いいか、びっくりするなよ!」
 「うん」

 病院の中には目には見えない緊張感が充満していた。
 病室には兄と姉、そして母親がいた。母親の顔は普段からは考えられないほど青白くそして、うつろな目だった。私は無意識のうちに病室を見回し、父を探していた。

 父親は、真っ白だった。

 ベッドの上の父は、全身を白い包帯で包まれていて、エジプトのミイラのようだった。包帯は顔も覆っていたが、その布地からは血がにじんだ。白い包帯は見る見るうちに赤く染まっていった。

 本当に私の父なのか。

 私は子供心に、これは大変な事が起こった、と思った。
 後から聞いた話だが、父の顔の皮膚は破けてめくれあがり、めくれた皮膚と骨の間に道路の砂利や土が入り込み、ひどい状況だったという。

 それを治療するためには、微細な石を一つずつ、いちいち取り除かなければならなかった。担当した医師は長年の経験と直感で、これほどひどいともう長くは持たない、と判断した。

 生きる可能性があれば別だが、すぐにも死んでしまうような人間に治療をしても無駄だと、担当医は顔にめりこんだ大きな石を取り除くだけの応急処置で済ませていた。
 めくれた皮膚の中に入り込んだ小石でところどころ盛り上がり、父の顔はデコボコの状態だった。

 重大事にもかかわらず、医者は他人事のように事務的な口調で母に言った。

 「おそらく、今夜で駄目でしょう。すぐに親族の皆さんを呼んでください」

 ショックだったが、医者の言うことだから信じるしかない。絶望した母や叔父さんは、手分けして親戚に連絡を取った。
 知らせを受けて集まった親族の誰もが、医者からの説明を聞き、またミイラのような父の姿を見て、もはや助かるまいと覚悟した。親族の中には、父の葬儀の話をしだす者もいた。

 その時、突然、母の顔が変わった。母に初めて「神」が降りた瞬間だった。

(続く)

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 次回は、「人の声か、神の声か」をお届けします。