青少年事情と教育を考える 22
Society5.0」時代の学び方、人材育成とは?

ナビゲーター:中田 孝誠

 「Society5.0」という言葉をご存じでしょうか。内閣府のウェブサイトを見ると「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会。我が国が目指すべき未来社会」と紹介されています。

 インターネットで人とモノがつながって知識や情報が共有され、新しい価値が生み出される。AI(人口知能)の発達で人間の仕事を代わって行えるようになり、少子高齢化や過疎化、貧富の格差による課題も解決していく。新しい時代の社会変革ということですね。

 文部科学省は6月、「Society5.0に向けた人材育成」という報告書を公表しました。学習の方法や人材育成の在り方を大幅に改革する、新しい教育政策を示した提言です。

文部科学省のウエブサイトより

 この中に書かれている内容は、例えば「スタディ・ログ」という個人の学習内容の蓄積を活用して、AIを使って各人に合った個別学習の計画やコンテンツを提供するとしています。
 また学校では、一律に行う一斉授業から、読解力などを確実に習得できるようにした上で個人の能力や関心に応じた学びができるようにしたり、異年齢や異学年でも協働で学習できる場を広げるようにします。
 こうしたことによって、どの子供でも基礎的な読解力や数学的思考力、情報活用能力を身に付けられるようにするわけです。

 そして、高校や大学に進学する際、学ぶ内容を単に文系と理系に分けるのではなく、両方を学ぶ人材を育成すること。高度で多様な内容を学習できるよう、高校生6万人当たり1カ所の割合でコンソーシアム(共同事業体、ラテン語で「提携、共同、団体」を意味する)という拠点を設置するとしています。
 選抜された高校生は海外への留学も必修にします。
 こうした取り組みによって、文理に幅広く通じ、高度な専門知識を持つ人材、地域コミュニティーを支える人材を育成しようということなのです。

 教育政策としては、今まであまりなかったような総合的な内容になっています。それだけに私たち国民の意識が変わらなければ実現するのはそう簡単ではないでしょう。しかし文系・理系に通じた人材やグローバルリーダーの育成といった、これまで不十分だった分野に力を入れようとしているわけで、実現すれば国の在り方を大きく変えることにもなりそうです。