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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる人生相談Q&A
幸せな人生の極意!

第128回 共産主義の人間疎外論の誤りを教えてください

ナビゲーター:阿部美樹

(動画版『ほぼ5分でわかる人生相談Q&A』より)

 皆さん、こんにちは!

 今回は、「共産主義の人間疎外論の誤りを教えてください」という質問に対してお答えいたします。

 共産主義の本質を知るためには、「人間疎外論」の理解が必要です。

 共産主義の社会観は、「生産手段を共有する社会である」というように、経済理論に見えますが、その核心にあるのは哲学理論です。

 共産主義を「神なき宗教である!」と呼ぶ理由がここにあります。
 哲学理論の核心部分にあるのが人間疎外論です。

 「疎外される」という言葉は、一般的には「のけ者にされる」という意味で使われますが、ここでは「人間の本質を失っている」という意味で使われています。

 カール・マルクスは、「人間の本質は労働である」「人間らしく生きるとは、自由に喜んで労働することである」「資本主義社会は人間の本質が奪われていて、労働者を搾取することで成り立つ社会である」と捉えました。

 そして、四つの疎外を主張しました。
 第1は、労働者からの労働生産物の疎外です。
 「労働生産物が資本家に奪われる」、つまり「労働者は資本家に搾取されている」という主張です。

 第2は、労働者からの労働の疎外です。
 「労働は自主的なものであり喜びであるべきなのに、資本家から強制され苦痛となっている」という主張です。

 第3は、人間からの類的本質の疎外です。
 これは「人間の本質を失っている」という哲学的な解釈です。

 第4は、人間からの人間の疎外です。労働者は物を高く売ろうとし、消費者は物を安く買おうとするため対立関係になり、「労働の喜びを感じることができない」という主張です。

 さらに、マルクスは資本主義社会の問題点の原因を「資本」と「私有財産制」であると言いました。ですから、「資本をなくさなければならない」「資本主義社会を倒さなければならない」と主張したのです。

 しかし、現実の共産主義国家は資本家に代わって共産党の幹部が新たな特権階級になり、人々は自由を奪われ、人間の本質はより一層疎外されました。

 人間疎外論に対して三つの誤りを指摘します。
 第1の誤りは、人間の本質を誤って捉えたことです。

 人間の本質は「労働」ではありません。人間の本質は、「自由意志に従って生きること」「本心に従って生きること」です。
 歴史を通してなされてきた革命や独立運動などは、全て命懸けで自由を求めた姿だったというのです。

 第2の誤りは、資本について誤って捉えたことです。
 マルクスは資本を吸血鬼になぞらえました。
 しかし、資本とはお金のことであり、本来、人間が主管すべきものです。問題は、資本を扱う人間の側にあります。すなわち人間の精神性が根本的な問題なのです。

 資本主義社会が貧富の差を容認するのは、「結果の平等」ではなく「機会の平等」を保障するためです。

 人間には、自由意志に基づき、自己の責任を果たして目的を達成するという責任分担があります。責任分担の機会を保障することこそが資本主義の本質です。

 第3の誤りは、労働者を偶像化したことです。
 マルクスは人々を資本家のグループと労働者のグループの二つに分けました。
 資本家のグループである資本家階級は、資本を持つが故に悪であり、労働者のグループである労働者階級は、資本を持たないが故に善であると神聖化しました。
 ですから、労働者階級の独裁は「正義である」と断定したのです。

 日本でもマスコミが労働者の要求は何でも正義であるかのように報道したり、反政府的な主張は何でも正しいかのように報道したりすることがあります。

 日本にも共産主義的な思想が入り込んでいることを強く感じざるを得ません。
 このような人間疎外論の誤りをよく知らなければ、共産主義をしっかり把握することはできないのです。


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