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コラム・週刊Blessed Life 245
傾聴に値するマルクス・ガブリエルの倫理資本主義

新海 一朗

 ドイツの哲学者で、現在、ボン大学の教授を務めるマルクス・ガブリエル(1980年~、42歳)が主導する「倫理資本主義」が、世界の注目を浴びています。
 マルクス・ガブリエルが唱える「新実在論」「新実存主義」に、思索する人々の関心が集まっているのです。

▲マルクス・ガブリエル(ウィキペディアより)

 2019年に新型コロナウイルスが発現し、2020年以降、世界がこの爆発的感染で悲惨なパンデミック状態に陥りました。
 人々の生活様式に大きな変化が起きたことを重く受け止めたガブリエルは、コロナ後の世界について思いを巡らせ、もはや人類はコロナ以前には戻れないと、はっきり語っています。

 2021年、マルクス・ガブリエルは、資本主義に代わる新しい理論を探し求めてヘーゲルとフレーゲの体系に着眼し、「フレーゲル(Fregel:フレーゲ+ヘーゲル)」を論理的な基礎としながら新しい理論を構築することができると述べたのです。

 「新型コロナ前の世界に戻りたい」は、絶対に不可能である。なぜなら、コロナ前の世界は良くないからだ。それは、私たちの開発速度があまりに速過ぎたため、人間同士の競争で地球を破壊したからである。2020年に起きたことは最後の呼びかけだった。自然が「今のようなことを続けるな」と訴えるかのようだった。

 ガブリエルはこのように感じ、以下のように考えました。

 非常に裕福な人たちは、コロナ危機で稼いでいる。得た利益をパンデミックで苦しんでいる人や国に分け与えるべきだ。コロナをきっかけに、世界の価値観の中心が倫理や道徳になるべきであり、「倫理資本主義」はポストパンデミックの経済思想になり得るものである。

 環境問題や貧困など世界的な問題は、グローバル経済が過度に利益を追求し過ぎた結果だとガブリエルは考えたのです。
 増えた富は、倫理観に基づいて再配分すること、これが完璧なインフラであると主張しています。

 マルクス・ガブリエルの思索の軌跡をたどってみると、彼は、現代世界が陥っている深刻な病状、すなわち、環境問題や貧困、経済格差などは、過度な利益追求の結果生じた負の産物であると見ています。それが新型コロナ前の世界であったと理解したわけです。

 従って、人類はコロナ前の世界に戻ろうと願望してはならないし、戻ってもいけないと言い切るのです。
 結局、彼は、新しい世界が必要であると結論付け、その新しい世界は「倫理資本主義」によって可能である、そのようにきっぱりと主張します。

 世界が激変する今日の状況を見つめつつ、マルクス・ガブリエルは、世界の混乱の原因が過度な利益追求という人間精神に巣食う貪欲な利己心にあることを理解し、それを克服しなければならないと考えたのです。
 その結果、「倫理」こそが人類救済の真の答えであるとしました。

 これは、経済という活動がともすれば利己的に流れる側面があるために、経済と倫理は相性が悪く、両立しにくいのではないかと見る人々が多い中で、そういった考えに真っ向から対決し、異議を唱える視座に立つ考えをガブリエルはあえて発言したものと言えます。

 彼の言わんとすることは、「倫理と経済は相反するものではない」ということです。
 彼はなぜこういう考えに立ったのでしょうか。それは、過度な利益追求や環境破壊などは持続可能性(サステナビリティー)を持たないという理由からです。
 道徳的に優れた経済を再構築する必要がある、それが「倫理資本主義」である、とガブリエルは世界に語りかけています。