世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

カンボジアの首都プノンペンで3年ぶりの日韓首脳会談

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、11月7日から13日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 北朝鮮、ロシアとの武器取引を否定(8日)。米国、中間選挙投票始まる(8日)。ロシア軍、へルソン州都から撤退開始(10日)。中国政府、「ゼロコロナ政策」継続を確認(10日)。日韓首脳会談開催(13日)、などです。

 日韓首脳会談が、カンボジアの首都プノンペンで3年ぶりに正式な対面形式で行われました。およそ45分間の会談でした。
 元徴用工問題について早期に解決する方針で一致し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向かって連携することを確認しました。また、北朝鮮がミサイル発射を続けていることを強く非難し、首脳間で意思疎通を継続していくことも確認されました。
 期待と希望を抱きました。

 これまでの日韓関係は、国交正常化後最悪といわれるほど悪化していました。
 韓国側が慰安婦問題に関する日韓合意(2015年)を事実上破棄し、さらに韓国大法院(最高裁)が2018年、元徴用工への賠償を日本企業に命じる判決を出したことなどがその理由です。

 岸田首相はこれまで、元徴用工問題を巡っては韓国側が一定の解決策を示すことが会談の前提との立場を取ってきました。9月に両首脳がニューヨークで30分ほど協議した際も、非公式の「懇談」との位置付けにとどめていたのはそのためです。

 会談で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は元徴用工問題の調整状況を説明したと思われます。尹政権はこれまで、外交ルートを通じて、韓国の企業などが出資する「財団」が日本企業の賠償金を肩代わりする案を提示していたのです。しかし日韓共に国内の反対論が根強く、合意へと導くのは容易ではありません。

 財団について説明しておきます。
 財団を使って日本企業の賠償を肩代わりする仕組みについてですが、韓国政府が2014年に設置した公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」を活用する計画です。
 この財団にはすでに、韓国鉄鋼大手のポスコが60億ウォン(約6億円)を拠出しています。今後日本企業の自発的な拠出も想定しています。

 韓国高裁はこの夏、日本企業の資産現金化を一時的に留保しました。
 しかし、原告や市民団体の反対は根強いものがあり、尹政権は30%前後の支持率で低迷しています。説得や調整は困難でしょうが政権は突破する覚悟を固めているようです。

 日本側の調整も困難です。韓国の官民協議会は、原告側が望む日本企業の謝罪が必要だと結論付けています。歴史問題で妥協したと受け止められれば世論の反発を招き、岸田政権は体力を消耗することになるでしょう。

 しかし日本政府が会談に踏み切った背景には、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射をはじめ安全保障上の事情があります。北朝鮮は7度目となる核実験の準備も進めており、日米韓3カ国を基盤に抑止力強化を急がなければならないのです。
 両政府にはなすべきことを堂々と進めてもらいたいと思います。



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