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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉QA

27回 障がい者福祉編⑨
大人の自閉スペクトラム症について教えてください

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 医学用語・法律用語としては「障害」とし、一般的な用語としては「障がい」と表記しています。

 今回は、「私の大学の友人が、最近になって自閉スペクトラム症だと診断されたそうです。彼と接する際に注意すべき点はありますか?」という質問にお答えします。

 前回の講座でお話ししましたように、日本においては、発達障害は「発達障害者支援法」で規定されています。

 この発達障害者支援法が施行されたのは2005年ですから、発達障害が法律で定義され、国内で広く認識されるようになってから、まだ20年もたっていないということになります。

 最近はさまざまなところで取り上げられ、多くの人に認知されるようになってきた発達障害ですが、以前はその名前さえ知らない人も結構いて、自分が発達障害だと気付かないまま子ども時代を過ごすということも少なくなかったのです。

 そして大人になってから医療機関で診断を受け、初めて発達障害だと分かったという、いわゆる「大人の発達障害」も増えているのが現状です。

 さて、自閉スペクトラム症は、対人関係やコミュニケーションの障がい、パターン化した興味や活動などを特徴とする発達障害です。

 自閉スペクトラム症の人は、他人の気持ちに共感することが難しく、その場の空気を読むことが苦手です。そのため、他人が嫌がることでも悪気なく口に出してしまったり、その場にそぐわない話をしてしまったりします。

 周囲の人がそのような特性を理解していない場合は、人間関係がうまく構築できず、嫌われてしまったり、孤立したりしてしまいがちです。

 また抽象的な表現が理解できず、決まったことや言われたことしかできないという傾向もあります。こだわりが強く、臨機応変に行動することが不得意で、急に予定が変わると混乱してしまいます。さらに、光や音などに対する感覚過敏がある人も少なくありません。

 このような障がい特性を持っている自閉スペクトラム症の人は、社会において生きづらさを感じていて、ストレスによって疲れ果ててしまうということもしばしばあります。

 ストレスがあまりに多くなると、身体症状として現れたり、適応障害になったりします。学校や職場でいじめを受けたり、ひきこもってしまったりすることも少なくありません。そしてさらにひどくなると、統合失調症などの精神疾患を発症することもあります。

 そのような発達障害の特性そのものではなく、それが原因となって二次的に起こる問題を「二次障害」と呼んでいます。

 自閉スペクトラム症の人がそのような生きづらさを抱えながらも、ストレスをためないように生活するためには、専門機関の受診や行政の支援、生活や仕事における工夫などが必要です。

 最近は発達障害の人に対する行政的支援も充実してきましたし、民間の支援団体も増えています。また感覚過敏に対しては、サングラスやイヤホンなどを活用して対応している人も多くいます。

 そして、自閉スペクトラム症の人が二次障害にならず、充実した生活を送るためには、家族や周囲の理解と配慮が欠かせません。

 自閉スペクトラム症の人と接すると、先ほど申し上げたような特性の故に驚かされたり、困惑させられたりすることもあるかもしれません。しかし、その言動が発達障害の特性の故であることを理解し、受け止めていくことが大事です。

 また抽象的な表現を避けて具体的に説明する、急に予定を変更しない、音や光などの環境に配慮するなど、接する際には具体的配慮をすることが必要です。

 それぞれの場面で、本人がどうしたいのかを考えていくことも大切です。

 同じ自閉スペクトラム症と言っても、人によって症状や程度が違いますから、ご友人が自閉スペクトラム症だと打ち明けてこられたのであれば、どういう点に注意してほしいのか、どのような配慮が必要かなど、直接に尋ねてみてもよいかもしれません。

 それでは、今回の講座はここまでにさせていただきます。