コラム・週刊Blessed Life 227
ヨーロッパは大丈夫か

新海 一朗

 7月3日、フランス大統領府はフィリップ首相と同内閣の総辞職を発表して、世間を驚かせました。
 フィリップ首相の率いるこのフランスの政変劇は一体何なのでしょうか。

 代わって、中道右派共和党のカステック氏が首相に任命されました。もちろん、フィリップ内閣の行き詰まりであったことは明らかですが、フィリップ首相の後ろにはマクロン大統領がいたはずですから、マクロン大統領の責任も大きいでしょう。
 マクロン大統領の辞任すらささやかれ始める始末です。

 7月7日、イギリスのジョンソン首相が与党保守党の党首を辞任し、首相の座からも退くことを明らかにしました。
 イギリスも大きく揺れ動いています。ジョンソン首相は、それなりに頑張っているようにも見えましたが、ジョンソン政権の閣僚たちが次々に辞任、そのスキャンダラスな性倫理のモラルハザードの数々は、その最終責任をジョンソン首相にたたきつけました。

 英国政界は、首相が率いる保守党の性モラルの低さを露呈しているのです。それだけが理由とは言えませんが、とにかく、セックススキャンダルが多いのです。

 7月13日、エストニアのラタス首相が中道左派与党・中道党の汚職疑惑の責任を取って辞任しました。
 2016年に就任以来の長期にわたるラタス政権の腐敗が明るみに出たということでしょうか。

 7月21日、イタリアのマリオ・ドラギ首相がマッタレッラ大統領に辞意表明の後、辞任しました。連立政権を組む与党三党がドラギ氏を支持することを拒否したのです。
 マリオ・ドラギ氏と言えば、首相になる以前には欧州中央銀行(ECB)の総裁として、ユーロ圏危機を乗り越えた人物です。

 イタリアの政治はどういう限界状況を抱えているというのでしょうか。
 2010年のギリシャ危機以来、欧州はどこの国も財政危機を抱え、それとともに、資金不足の中で政権運営の危うさが目立つようになりましたが、2022224日以降のウクライナ戦争が加わって、さらに、ウクライナ支援による財政状態に負担がかかり、国家経済の逼迫(ひっぱく)を迎えていると言えます。

 おまけに、ロシアからのエネルギー輸入が難しくなり、石油価格の暴騰、電気代の高騰など、インフレのすさまじさで、国民は悲鳴を上げています。

 さらに、どういうわけか、例年にない猛暑が欧州を襲い、人々は熱中症で倒れ、山々は火災で燃え上がっています。40度を超える炎熱地獄が、イギリスで、スペインで、その他、各地で見られるその様は、まさに地獄そのものといったニュース映像が飛び込んできます。

 辞任、辞任、辞任、相次ぐ首相の辞任で、現在、欧州は政権運営の自信を喪失し、青息吐息なのではないか、そういった印象を強く受けます。

 イギリスのEU(欧州連合)離脱も堪(こた)えたと思いますが、飛び出したイギリス自身も、イギリスを失ったEUも、それぞれ苦境に陥っており、まさに欧州全体が窮地に陥っている感が拭えないのです。

 EUを構成する各国同士も、その関係が良好とは言えず、ギクシャクする関係を何とか持たせているといった印象が強く、お互いに余裕のない中、必死に政権運営を取り繕っているように見られます。

 こういう状態であれば、明らかに「ウクライナ支援疲れ」は、早晩訪れることはもはや避けられません。