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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

韓国統一地方選、与党圧勝

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、530日から65日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 バイデン米大統領、「プーチン氏の追放模索せず」と寄稿(531日)。韓国統一地方選挙の投開票(61日)。豪、サモアに哨戒艇を提供へ(2日)。韓米の共同訓練、原子力空母参加(2日)。ロシア石油禁輸、EU(欧州連合)が発動決定(3日)。北朝鮮ミサイル、異例の同時8発発射(5日)、などです。

 韓国統一地方選(4年ごと)の投開票が61日に行われました。
 尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権下で初めての全国規模の選挙でしたが、与党「国民の力」が圧勝しました。
 地方政治の権力構図が再編され、今後、少数与党である尹政権の国政運営にも弾みがつくことになったと言えます。

 焦点となった17の広域自治体(市・道)首長選では12自治体で与党が勝利。ソウル市長選で呉世勲(オ・セフン)氏、仁川市長選で劉正福(ユ・ジョンボク)氏、いずれも与党が勝利するとともに、忠清北道、忠清南道、世宗市、大田市の忠清圏4カ所も全て確保したのです。
 そして、大邱市、慶尚北道、釜山市、蔚山市、慶尚南道、江原道でも勝利しました。野党「共に民主党」は、京畿道、光州市、全羅南道、全羅北道、済州道の5カ所での勝利にとどまりました。

 大激戦が予測されていた京畿道知事選は、共に民主党の金東兗(キム・ドンヨン)氏(経済副首相)が国民の力の金恩慧(キム・ウンヘ)氏(テレビキャスター出身の女性、尹大統領の報道官を務めた)に競り勝って一矢報いた形になっています。

 前回(2018年)の道知事選では共に民主党が14カ所で勝利していますので、今夏の統一地方選はほとんど逆の結果となったと言えます。

 226の基礎自治体の首長選では、国民の力が145カ所、共に民主党は63カ所を確保(62日時点)しています。

 先の大統領選では与野党が拮抗(きっこう)する大激戦となり、政治勢力が二分する様相を見せた中での与党の勝因は、①早々に米韓首脳会談を実現したこと、②新型コロナウイルス感染の防疫措置で打撃を受けた小規模事業者などに損失補填(ほてん)金を支給する補正予算を成立させたことなどが挙げられています。

 一方、共に民主党の敗因は、①検察から捜査権のほとんどを剥奪する法改正の強行や、②尹政権の初代首相、韓悳洙(ハン・ドクス)氏の任命同意や補正予算案の処理過程において見せた振る舞いが評価を下げたこと、③さらに党の重鎮による性的事件疑惑や党内「内紛」が国民の批判を招いたことが、選挙結果に響いたと見られています。

 内紛とは、党トップに抜てきされた政治未経験の20代女性、朴志玹(パク・チヒョン)氏(26歳)が党の組織改革を要求し、それに対して守旧派の党幹部や支持者が一斉に反発したことです。

 朴氏は学生時代に、性的暴行動画が大規模に拡散された事件の取材を敢行し、警察やメディアに通報して実態解明につなげ、カリスマ的人気を得た女性です。

 先の大統領選で、選挙終盤に共に民主党陣営に合流したことにより、若年女性の支持が急拡大し、接戦に持ち込む立役者になったと見られていました。そして大統領選挙後は、組織改革をアピールする党の顔役になったのです。

 ところが朴氏は、党内組織改革として文前政権の中心だった「86世代」の引退を促す提言をしました。
 この発言に党幹部らが相次ぎ反発したのです。これが内紛です。

 統一地方選挙と共に国会議員補欠選挙が7選挙区で実施されました。
 結果は与党が勝利。国民の力は4議席を獲得し共に民主党から1議席を奪い、共に民主党は3議席のうち2議席を守りました。その結果、国会議席は国民の力が114議席、共に民主党は169議席となりましたが、野党優位は揺るぎません。

 しかし保守政党がこれまでの、2016年の総選挙、17年の大統領選、18年の地方選、20年の総選挙と全国規模の選挙で連敗の流れを断ち切ったという意味は極めて大きなものがあります。
 2年後の国会議員選挙にどのようにつなげていくのかが課題です。