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コラム・週刊Blessed Life 219
ウクライナ戦争の終末論的考察

新海 一朗

 終末論は、キリスト教神学において、「世の終わり」を考察するものです。

 特に、聖書のマタイによる福音書第24章に記述されている事柄、すなわち世の終わりの時にはどんなことが起きるのかについて、イエス・キリストが語った予言的な言葉を解釈することが中心的な内容になります。

 そこに書かれている事柄は、イエスの再臨 世界戦争 飢饉(ききん)、地震 大患難(かんなん)、などです。

 これがいつのことか究明してみましょう。
 まず、「民は民に、国は国に敵対して立ち上がる」という言葉に注目すると、第1次世界大戦(19141918)、第2次世界大戦(19391945)を思い起こさせますから、20世紀を終末時代の到来と見るのが自然です。そして、終末時代とイエスの再臨が重なっていることから、再臨も20世紀の出来事と見ることができます。

 さらに第3次世界大戦を、米国とソ連の「冷戦(民主主義 vs. 共産主義の衝突)」と解釈すれば、それは1945年から1989年(マルタ会談)までとなります。
 共産主義国家としてのソ連は中国と北朝鮮を生み出しましたので、その2カ国がまだ生き残っているのを見ると、第3次世界大戦は、2022年現在も完全に終結したとは言えないということになります。
 すなわち、民主主義的な思想と共産主義的な思想の相克は、現在も続いているということです。

▲写真はイメージです

 ソ連が解体しロシアになったことは、米国の勝利と見ることができますが、ソ連崩壊後のロシアの弱体化と混乱を受け入れられないプーチン大統領は、失地回復の野望を抱き、クリミア半島の奪回(2014年)、そしてついに、今回のウクライナ戦争を引き起こします。

 これは、スターリン時代のソ連の独裁的強権主義と何ら変わらない体質を示しており、民主主義の価値観がロシアに根付くことの難しさを物語っています。
 しかし世界を敵に回す状況に陥った現在のプーチンのロシアが長く続くとは思われませんから、今後のロシアの変化を見守らざるを得ません。

 そうなると、ウクライナもまたこの戦争が終わった後の国家再建の道のりにおいて、焦土と化した多大な国土(日本の1.6倍)の復興をどうするか、4,000万人の人口の中で700万人がロシア人であるという状況をどう融和的な共存に持っていけるのか、その他、ベラルーシ人やモルドバ人、ユダヤ人なども多く暮らしていますから、多民族的に構成された国を、争いのない国とするモデルづくりも考えなければなりません。

 ロシアもウクライナも、双方共に新生ロシア、新生ウクライナの道を歩み、世界に見せることのできる復興再生の道を歩まなければなりません。
 二つの国は、お互いに「産みの苦しみ」を経て、新しい国家へと生まれ変わる必要があります。

 “お互いに問題を抱えていたからこうなった”のであるとすれば、それはいったい何か。
 民主陣営(EU〈欧州連合〉、米国)から蜂の巣をつつくように干渉されてきたウクライナ。ソ連や帝政ロシアの夢を見て失地回復に執念を燃やしたロシア。

 結局、ウクライナを舞台にロシア(旧ソ連、共産主義)と西側(民主主義)の思想闘争が展開されたウクライナ戦争であると見れば、民主主義と共産主義を超えた新しい価値観、「共生」「共栄」「共義」の21世紀に向かう大転換期の時代相、すなわち、終末論的時代の不可避的な思想闘争がウクライナ戦争の意味であると理解できるのです。