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青年よ行け、そして世界を救え
21世紀の青年運動への提言(32)

 36家庭の朴普熙(パク・ポーヒ)先生(1930~2019)による講演「青年よ行け、そして世界を救え」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。

(光言社・刊『青年よ行け、そして世界を救え』より)

世界平和青年連合(日本)創設大会記念メッセージ

19951214日(木)午後6
日本都市センターホールで開催

▲「世界平和青年連合(日本)創設大会」で記念メッセージを語る朴普熙先生(19951214日・東京)

②もう一つの維新を起こすべき日本

 では、その平和と繁栄の絶頂に達した日本は、今、幸福の頂点にきているのでしょうか? そうではないのでございます。日本は空前絶後の平和と繁栄の中にありながら、今ほど不安な時代はないのではないかと存じます。

 この日本には、今ほど世紀末、終末的悲観が強い時はなく、今この日本に不安でない人は、一人もいないと言っても過言ではありません。それにまた、だれも予想しなかった阪神大震災が起こりました。それに引き続いて、次から次へと大きな事件が起こります。オウム真理教による猛毒サリンの無差別殺人事件は、日本人の魂を根底から揺さぶりました。果たしてこんなことが、本当に日本に起こったのか? こんなことが日本に起こって良いのか? 良識ある日本人は、あぜんとならざるを得ませんでした。

 サリン事件以上に驚愕(きょうがく)的であったのは、日本の最高学府のエリートたちが、サリン製造に加わったばかりか、地下鉄でサリンをまいて、平然として犯罪者になったことであります。そこに何らかの道徳的抑制がなかったばかりか、それを正義と信じて無差別殺人に正々堂々と参画したことであります。ここに、価値観の混乱に陥った日本の現状を見いだすのでございます。

 戦後、日本の教育はもっぱら日本を科学技術の発展した、豊かな経済国家にしようとする方針だけで行われたと思います。そこでは、教育の理念というものを全く失っていると言っても過言ではありません。日本の戦後教育は、平和と民主主義の教育と言ってもよいでしょうが、平和と民主主義は何ら確固とした道徳にはなりません。

 平和は、理想が実現された時の結果であり、民主主義は一つの統治の方法であります。民主主義はイデオロギーではなく、道徳ではもちろんありません。民主主義の始祖ともいえる、アメリカの三代目のトーマス・ジェファーソン大統領は、「民主主義は、高い道徳的土壌でしか育たない」と、結論づけました。アメリカの民主主義が200年間成功してきたのは、キリスト教の高い道徳的基盤をもっていたからであり、それゆえに栄えてきたのであります。

 日本の戦後50年の教育は、心の教育の不在であったと言ったら過言でしょうか。心の教育の不在は、若者たちの心の中に価値観の不在を呼び起こし、ついにオウムのエリートを、犯罪にまで追い込んだのではないでしょうか?

 日本は今、心の危機を迎えております。経済的豊かさの頂点にあって、心が枯れいくのを目撃するものでございます。日本は今、道徳の荒廃を被っております。

 戦後50年、技術中心の教育から、物は得たものの、あまりにも大きな精神的犠牲を払っております。この日本にとって最も悲しいことは、50年前、軍国主義と共に、日本古来の価値観と道徳観念が一遍に崩壊したことであります。忠君愛国と大和魂が、一夜にして絶対善から絶対悪となった時、日本古来の道徳的価値観も、一遍に葬られたのでございます。

 それにつけ入って、反動的に日本の空虚なる価値観を埋めた左翼思想が、日本古来の良風美俗をことごとく破壊し、完璧(かんぺき)に無神論に基づいた人本主義思想が主導的役割を果たしてきたことは、日本の近代史の最も不幸なる面でございます。

 日本は近代史において、2回も価値観の転落を目撃したのでございます。その一つは、軍国主義の価値観の崩壊であり、そのもう一つは共産主義宗主国ソ連の終焉(しゅうえん)による左翼思想の価値観の崩壊であります。今日の日本人全体、特に、日本の若者たちが道徳的懐疑主義者になったのはあまりにもはっきりとした、同情すべき事実でございます。

 こういう背景の中で、今の日本は道徳的危機にさらされております。これは今の日本社会が混沌としている根本原因でございます。日本の今の政治、経済、社会、すべての問題において、この道徳的危機を克服せずには、その解決はないと思うものでございます。

 日本の心の危機を救わなければなりません。心が枯れた状態では、日本は政治も経済も絶対に強くなれません。今、日本は、日本が本来伝統的にもっていた道徳大国の規範に戻らなければなりません。そして、今からの日本の国家目標は、道徳大国建設でなければなりません。

 ここに、私は今日創設される世界平和青年連合に大きく期待するものがあるのでございます。ここに結成される青年連合は、これからの日本の道徳大国建設の主役にならなければなりません。日本は今、もう一つの維新を起こすべきであります。そして、この平成維新は道徳維新でなければなりません。

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 次回は、「世界平和青年連合(日本)創設大会~記念メッセージ③ 内村鑑三の名言」をお届けします。