愛の知恵袋 159
若人よ、早く結婚しよう!

(APTF『真の家庭』280号[2022年2月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

子供たちが結婚してくれないという悩み

 あるご夫婦から、子供のことで相談を受けました。

 「私達の一番の悩みは、子供がなかなか結婚しないことです。息子はもう36歳になるのに結婚する気配が見えません。あんまり言うと嫌がるので、我慢していますが、本当に困ったものです。どうしたらいいんでしょうか?」

 実はわが家も同じような事情を抱えているので、他人ごととは思えず、「いやあ、本当に困ったものですねえ」と言って、つい顔を見合わせてしまいました。

 結婚が遅れると、その後の妊娠、出産、子育てから自立させるまで、親の負担が非常に重たくなることを私自身も経験してきたので、子供達には少しでも早く結婚してほしいと思っているのです。

 私の場合も結婚は遅めでしたから、子供は3人以上ほしいと期待していましたが、思い通りには行きませんでした。妻が最初に妊娠した時は3カ月目で流産。2回目の妊娠の時にはすぐに入院し安静にして、やっと長女を授かりました。

 あとは順調にいくかと思いきや、第2子を授かるのにも苦労をしました。二度の流産を経て、7年半後にやっと授かったのが長男でした。病院の家族待機室で思わず万歳をしたのを思い出します。その時、私はすでに41歳、妻が39歳でした。

 あれから33年がたち、40歳になった娘はすでに結婚して7歳と3歳半になる二人の男児を授かって、愛情深く育てているのを見てホッとしています。

 しかし、東京にいる息子のほうは、もう33歳になるというのに、いまだ仕事に熱中していて結婚していません。親としては気が気でないので、お相手を探し始めていますが、本人はもう一つ切実感がないようで、全く困ったものです。

日本の深刻な晩婚、非婚の実情

 今、日本では若者の晩婚化が止まりません。厚生労働省の統計を見てみましょう。

 2020年(令和2)の日本の初婚平均年齢は、夫31.0歳、妻は29.4歳でした。

 また、生涯未婚率(50歳時未婚率)は、男25.7%、女16.4%に上っています。

 このような晩婚化・非婚化の現象は日本歴史始まって以来のことでしょう。

 問題は、「晩婚」が「晩産」に直結するということです。医学的、生理学的観点から見た妊娠、出産、育児の適齢期をはるかに過ぎてから“妊活”に取り組まなければならないカップルが増えているのです。

 高年齢での結婚では、妊娠しにくくなるリスク、流産しやすくなるリスク、障がい児が生まれるリスクなどが増大しますが、その後の子育ても重労働なので苦労します。

 また、今は大学や専門学校に進む人が大半ですから、その教育費と自立できるまでの経済的支援を、親が高齢になってからも負担しなければならないことになります。

 つまり、晩婚は、本人にとっても親にとっても非常に負担が大きくなります。

 こう話すと、「じゃあ、結婚しないほうがいいんじゃないか?」という人もいるかもしれませんが、決して、そうではありません。

 結婚と家族は人生で一番大事なものです。何らかの事情があって遅くなった人でも、結婚しないよりはしたほうが良いというのは大前提の話です。

早く結婚し、愛情あふれる家庭を築こう!

 「婚期を逃してしまった」という40代・50代の男女に理由を聞いてみると、「つい仕事を優先して、結婚を先送りにしてしまった」という声が一番多くありました。

 この世で家族ほど大切なものはありません。人はどんなに才能があり、仕事で業績を挙げたとしても、愛する家族を持たないのでは真の幸福を味わうことはできません。

 仕事も夢も一生をかけて取り組んでいけばよいのです。しかし、結婚には“適齢期”があるので、決してそのチャンスを逃さないでほしいのです。

 何千人という人の臨終を看取ってきた経験をもとに、『死ぬ時に後悔すること』という本を書いた医師もいますが、人が人生を終える時の数々の後悔の中でも、最も深刻で悲痛な後悔、それは「結婚を一度もせず、家庭を持てなかったこと」であり、「子孫を残せなかったこと」ではないでしょうか。

 人生の最終目的は人格を完成させることだと思います。そして、人格完成とは愛における成熟と完成です。その目標は家族を持って夫婦の愛、親子の愛、兄弟姉妹の愛を究め、更に世界を愛するということなしには達成できません。

 ですから、人間にとって結婚は絶対に必要なことなのです。

 キャリアも地位も収入も大切ではありますが、結婚して家庭を完成させることはもっと重要で価値があることです。そして、その結婚はただ待っていても実現はできません。親と本人が行動を起こさなければ手に入りません。

 若人よ、結婚しよう! 哲人ソクラテスもこう言っています。

 「ともかく、結婚したまえ! 良い妻に出会えば幸せになれるし、悪い妻に出会えば哲学者になれる。それは誰にとっても良いことなのだ」

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 次回の配信は2022年3月11日(予定)です。