孝情を育む 20
ありがとう

家庭教育部長 蝶野知徳

 『ムーンワールド』で連載中の蝶野知徳・家庭教育部長による子育てについてのエッセーを、Blessed Lifeでも隔週でお届けします!
 孝情を育む子女教育を考える上で、どんな思いで向き合えばいいのかを端的に分かりやすく解説します。

子供に力を与える言葉
 ある小学校で、子供たちに、「親から、どんな褒め言葉をかけられたら、いちばんうれしいですか?」というアンケートを取ったところ、いちばん多かったのが「ありがとう」だったそうです。単純で短い言葉ですが、子供たちは自分たちよりも人生経験の長い親から、「ありがとう」という言葉をもらうと、本当に力が出るそうです。尊敬するお父さん、お母さんの役に立つことができたという、子女の最高の自尊感情、自己肯定感を育てる力を、この親からの「ありがとう」は持っていると言えます。

 子供がお手伝いをしてくれたり、お願いを聞いてくれたりしたとき、当たり前だと思わずに、この短い感謝の言葉を忘れずにかけてあげることが大切です。人に物をもらったときや、お世話になったときには、「お礼をちゃんと言った?」とチェックをすることがありますが、親が子供に「ありがとう」をあまり言っていないのに、子供にばかり求めるのもおかしいでしょう。

 お手伝いはもちろんですが、段階によっては、子供が自ら、遊び終わったおもちゃの片付けをしたときにも、「ありがとう」「助かるわ」と言ってあげると、「自分は役に立てる」という体験をしたことになります。結局、自分に価値を感じるということです。

 このとき、「いい子だね」「偉いわね」という言葉も悪くはないのですが、それは子供を“評価”することにもなるのです。ですから、親に評価されるために親の前では良いことをする、という学習になり、本性を刺激しないのです。あくまで人を喜ばせる喜びを体験させることがポイントです。自尊感情や自己肯定感というものの本質は、「自分に価値を感じている」か、というところにあります。

父母の役割
 本性は自分の神的価値を知っています。大切なのは、幼い段階から、その本性と呼応する体験を通し、自分の価値をより深く知りながら成長していくことです。

 み言の核心は「ために生きる」ということに尽きるのですが、神様がすでに、その原動力を人間の心の中に与えてくださっているのです。ですから、「ために生きる子供に育てる」というよりは、「子供の本性を刺激する体験をサポートする」といった立場が、父母の役割ではないかと思います。

---

 次回は、「子供にもちゃんとあやまる」をお届けします。