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映画で学ぶ統一原理 24

(この記事は、『世界家庭』2020年10月号に掲載されたものです)

ナビゲーター:渡邊一喜

『スパイダーマン:スパイダーバース』
2018年。117分。

恐れを感じ、能力を発揮できないスパイダーマンに説かれた「Leap of Faith(信仰の跳躍)」

後編 第1章 復帰基台摂理時代 / アブラハム家庭

 「Leap of Faith(信仰の跳躍)」とは、哲学者キルケゴールの思想を表した言葉である。彼は著作の中で、アブラハムが息子イサクを神に献祭しようとした場面を取り上げ、倫理を超えた宗教的行為の意味を人生論として説いた。

 今回は、この言葉が物語の重要な鍵となる映画を紹介する。2018年公開のアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』である。キルケゴールを仲介としながら、『スパイダーバース』でアブラハム家庭を考えよう。

 スパイダーマンがすでに活躍しているニューヨークが舞台である。主人公のマイルス・モラレスは、黒人の中学生で、平凡な少年である。しかし、あるときに突然変異のクモにかまれ、特殊な能力に目覚めてしまう。

 そんなときに、ある企業が裏で行っている多次元との連絡実験を阻止しようとして、スパイダーマンが命を落としてしまう。ところが、実験の影響でそれぞれの平行世界のスパイダーマンたちが、現代のニューヨークに引き寄せられ、集結する。
 個性的な5人のスパイダーマンと、スパイダーマンの能力に目覚め始めたマイルスは紆余曲折を経て、悪の組織と戦うようになる。

 「Leap of Faith」という言葉が出てくるのは、マイルスがスパイダーマンとして初めて戦う、その結びの場面である。恐れを感じ、能力を発揮することができず、結果としてマイルスの叔父が命を落としてしまう。ショックで自身の殻に閉じこもるマイルスは、誰の慰めも励ましも受け付けない。
 そんなマイルスに対して、別のスパイダーマンが「Leap of Faith」と説くのだ。

 マイルスが状況を打開できる論理的かつ倫理的な根拠など、どこにもない。しかし進まなければならないならば、信念の跳躍をなすしかないのだ。アブラハムのイサク献祭にも同様なことが言えるだろう。「原理」を知らないアブラハムにとっては、イサク献祭は「信仰の跳躍」以外の何ものでもない。論理を超え、倫理を超えた先にアブラハムの信仰の勝利はあったのである。

 「Leap of Faith」という言葉は現代の英語圏では「信じて飛び込め」ほどの意味で、特別宗教的な意味合いは持たない、ごく一般的に使われる表現である。
 マイルスの成長を通じて、アブラハムの信仰を見詰め直してはどうだろうか。

(『世界家庭』2020年10月号より)

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