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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉QA

第12回 高齢者福祉編⑪
認知症の傾向が見られる一人暮らしの母親を支援してくれるサービスや制度はありますか?

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 今回は、「故郷で一人暮らしている母親が高齢になり、認知症の傾向が少し見られるようになってきました。日常生活で何かと心配なことが多いのですが、支援をしてくれるサービスや制度はありますか?」という質問です。

 離れて暮らす高齢の親御さんがいると、とても心配ですね。
 高齢者のかたが日常生活で困った時、近くに子供が住んでいればすぐ助けに来てもらうこともできるでしょうが、遠くにいたり、子供がいない場合はそうもいきません。

 今回は、そのようなかたのために介護保険制度以外の福祉サービスである「日常生活自立支援事業」についてご紹介します。

 日常生活自立支援事業は社会福祉協議会が実施しているもので、認知症や障がいなどで判断能力が不十分なかたが、住み慣れた地域で安心して自立生活を送れるように、福祉サービスの利用手続きや金銭管理などの相談に乗ったり、お手伝いをしたりする制度です。

 「福祉サービスを使いたいけれど、どうすればよいか分からない」「日常生活上のさまざまな契約をする際、自分一人で判断するのは不安だ」「最近、物忘れがひどく、預金通帳をちゃんとしまったか、いつも心配になる」などの不安を抱えているかたはこの制度を利用してみるのもよいでしょう。

 この制度の実施主体である社会福祉協議会というのは、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした非営利団体で、「社協」という略称で知られています。

 地域の住民や福祉・保健の関係者、行政機関、ボランティアなどによって構成されており、全国の都道府県および市町村にネットワークを持っています。

 社協は各種の福祉サービスや相談活動、ボランティアや市民活動の支援、共同募金運動への協力など、さまざまな形で地域の福祉増進に取り組んでいます。

 さて、日常生活自立支援事業について具体的にご説明します。

 この事業のサービスには、福祉サービスの情報提供・相談・利用申し込みや、契約の代行・代理、料金の支払い代行、医療費や税金、社会保険料、公共料金、日用品購入の代金などの支払い手続き、預金の出し入れや解約手続き、住民票の届け出などの手続き、クーリング・オフ制度の利用手続きなどがあります。
 また、大切な通帳や印鑑、証書などの保管も請け負ってくれます。

 このサービスを利用するためには、まずご本人の住んでいる市町村に設置された社会福祉協議会に連絡します。

 ご本人ではなく、ご家族が問い合わせることもできます。
 連絡をすると、専門的な知識を持った担当者が訪問してくれますので、相談に乗ってもらってください。

 困っている内容や希望を伝え、具体的にどのようなお手伝いをどれくらいの頻度で行うかを一緒に考えた上で、契約内容や支援計画を提案してくれます。
 それに合意がなされれば、ご本人と社会福祉協議会の間で利用契約が結ばれることとなり、その後サービスが開始されます。

 相談や支援計画の作成にかかる費用は無料ですが、サービス利用には料金がかかりますので、前もって金額を確認するようにしてください。

 なお、このサービスは福祉施設や病院に入所・入院している場合でも利用することができます。

 ただし、もし認知症が進み、さらに判断能力が低下してきた場合は、成年後見制度への移行が求められるようになります。

 この制度につきましては、次回詳しくお話したいと思います。