https://www.kogensha.jp

天国への年賀状

(光言社『グラフ新天地』439号[2005年1月号]より)

作・うのまさし
画・小野塚雅子

 「てんごくのおじいちゃんへ
 あけましておめでとう
 あいたいです。
 きよはらまち2ちょうめ おかめぐみ」

 「こんなのがポストに入っていましたけれど、どうしましょうか」

 ある郵便局で、幼い文字で書かれた年賀状が見つかりました。

 「秋に亡くなった岡さんのお孫さんの葉書だ。いつも下駄をはいて、お孫さんと散歩していたな。昔から人の世話をよくするいい人だった」

 郵便局の局長さんがしばらく考え込みました。

 「そうだ。めぐみちゃんに返事を書いてあげよう。ご両親には伝えておく。ところで、この町には雪は降らないよな」

 「おてがみありがとう。
 めぐみちゃんがよいこにしていたら、ゆきがふるひにきよはらこうえんでまっているよ。
 おじいちゃんより」

 「わあーい、天国のおじいちゃんから返事が来たよ。良い子にしていたら、会いに来るって。めぐみ、きょうからお手伝いする」

 その日からめぐみちゃんは、お掃除や後かたづけをするようになりました。
 そして、寝る前には仏壇のおじいさんに向かって「きょうも良い子でいました。おじいちゃん、早く会いに来てください」と、祈りを捧げました。


 何日かたった寒い朝、局長さんが目覚めると、あたりは真っ白でした。

 「雪か…」

 「明け方、清原(きよはら)地方に、3年ぶりに雪が降りました。雪は1時間ほどでやみました」

 天気予報を聞くと局長さんは、清原公園に向かいました。


 公園にはめぐみちゃんがたった独りで散歩していました。

 「おじいちゃん」

 めぐみちゃんのうれしそうな声が聞こえてきました。

 局長さんが下に目をやると、淡く積もった雪にはめぐみちゃんの足跡と下駄の跡がはっきりと見えました。