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映画で学ぶ統一原理 19

(この記事は、『世界家庭』2020年4月号に掲載されたものです)

ナビゲーター:渡邊一喜

『きみに読む物語』
2004年。123分。
※ネタバレあり

認知症の老女に、老紳士が毎日、読み聞かせたのは……。
ふたりの関係性から、夫婦の真の姿を考える

前編 第1章 創造原理

 2004年の映画『きみに読む物語』は、1996年に発表されたニコラス・スパークスの小説を原作に、ニック・カサヴェテス監督が映画化したものである。今回はこの『きみに読む物語』を通じて、「四大心情」の一つ、「夫婦の愛」を学ぼう。

 プロットに一つの仕掛けがあり、それが終盤に明らかにされていくのだが、この「映画で統一原理を学ぶ」というコーナーの性格上、そこに触れずに進むことが難しい。ゆえに今回はネタバレをご容赦願いたい。良作は、結末を知ってから見ても良作である。 

 重度の認知症を患い施設に入院している老女の元に、同年代の老紳士が訪ねてくる。そしてある物語を読み聞かせる。 

 ──1940年夏、米国南部のとある町で、若い男女が出会い恋に落ちた。製材所で働くノア(ライアン・ゴズリング)と資産家の令嬢であるアリー(レイチェル・マクアダムス)は互いに運命を感じ将来を約束するようになるが、アリーの両親はそれをよく思わず、休みが明けるとアリーをニューヨークの大学へ送ってしまう。

 ノアはアリーを信じ続け、1年で365通の手紙を送るが、アリーからの返信はなかった。そして時代は第2次世界大戦に突入し、ノアも従軍を余儀なくされる。しかし、ふたりの物語はまだ終わらなかった……。

 実は、老紳士が読み聞かせる男女の物語は、自身と老女との実話であり、このふたりは現実の夫婦なのである。しかし老女は認知症のため、その事実を忘れてしまっている。
 老紳士は毎日、妻の元に通い、さも初めて会ったかのように毎日同じ物語を、自分と彼女の物語を読み聞かせていたのだった。

 劇中で物語を読み終えたとき、老女はそれが自身の話であることを思い出す。ふたりは涙で抱き合うのだが、30分もたたないうちに彼女は夫を忘れてしまった。老紳士は涙を流し、心を痛めるが、妻に向かう愛は変わらない……。この後の結末は伏せておく。

 若く美しいときだけ愛するのが愛ではない。心地よい授受を行える関係ばかりが愛の形でもないのだ。夫婦とは、分かち難く魂が結ばれた唯一無二の関係であり、神の似姿である。
 夫婦の真の姿について考えさせてくれる素敵な作品である。ぜひ、夫婦で見ていただきたい。

(『世界家庭』2020年4月号より)

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