コラム・週刊Blessed Life 164
日米首脳会談で発表された日米声明

新海 一朗(コラムニスト)

 バイデン政権と菅義偉政権は、4月16日午後(現地時間)、対面での首脳会談を行い、日米声明を出しました。

 その中心的な内容は、台湾の問題に集中した形になりました。また、香港や新疆(シンチャン)ウイグル自治区の人権問題について懸念を表明するなど、これまで、日本政府が態度を明らかにしてこなかった問題に関して、今回の会談で、アメリカ寄りの態度をはっきりさせたことは、菅政権の本音がどこにあるかを闡明(せんめい)にする結果となりました。

 民主党のバイデン政権になって、中国との関係を深める方向に行くのではないか、台湾がますます危なくなるのではないか、オバマ政権時代のような再びの米中接近の中で、日本も難しい舵取りを強いられるのではないかなど、いろいろ危惧される状況がありましたが、ふたを開けてみれば、共和党のトランプ政権が敷いた中国けん制の路線は、民主党も引き継がざるを得ず、台湾擁護の確固たる姿勢を崩すことはありませんでした。

 それほど、中国の本性(ほんしょう)と危険な野望を米国は見抜いてしまったということ。従って共和党、民主党どちらに政権が転んでも、中国への厳しい米国の外交姿勢は変わらないということに他ならないでしょう。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)以降、アメリカのみならず、世界は中国に対して警戒心を抱くようになりました。

 中国は国連加盟の弱小国家群を味方に巻き込み、数の力で欧米や日本の圧力を跳ね返そうと画策していますが、アメリカが中国に対する強硬路線を変更することがない限り、着実に、中国は追い込まれていくと見てよいでしょう。

 この会談で、アメリカは日本がアメリカと共に対中戦略を共有できることを確認しました。日本は中国に対して「忖度(そんたく)」を続けていただけに、アメリカの不信感は本音のところで拭えないものがあったでしょうが、今回の声明で、アメリカが日本に対して安堵の気持ちを持ったことは確かなことだと思います。

 そして、台湾を中国から守るという「日米声明」に大きな期待と喜びを感じたのは、何よりも台湾の蔡英文総統と台湾国民であることは、これまた、疑う余地がありません。

 アメリカと台湾が日本政府の意志と外交政策の方向性を知って心強く感じたのとは対照的に、中国はアメリカに対してだけでなく、日本に対してもいら立ちを感じ、大きな不満を持ったことは間違いありません。
 南シナ海、台湾および尖閣諸島に対して、「核心的利益」の言葉を呪文のように繰り返す中国のかたくなな侵略的態度は、あまりにも独りよがりです。

 習近平政権がアメリカとの関係でつまずいて、香港、台湾、ウイグルなどで政策を過激化させると、世界はますます中国離れを引き起こす結果となります。そこに経済まで不安定になった場合、終身独裁の習近平の強権政治は彼を脅かす反対勢力の力を増強させる結果を招くだけで、政権崩壊の恐れすらあります。
 今後、中国は厳しい政治の舵取りをせざるを得ません。

 いずれにしても、今回、頼りないように見えたバイデン政権が日米同盟の実質を表す「日米声明」で中国に対する一歩も引かない厳しい態度を示したことは、軍事攻勢を強め、米国をも脅かす中国へのけん制という意味で、一定の役割を果たしたと言えます。