コラム・週刊Blessed Life 160
韓国、大統領と検事総長の対立はどこで決着するのか

新海 一朗(コラムニスト)

 朴槿恵前大統領は弾劾によりその不法行為が民事訴訟として告発されましたが、民事訴訟裁判はその後もずっと開かれずにいるところを見ると、朴槿恵前大統領に対する弾劾は一種の魔女狩りのようなものであったと考えざるを得ません。

 文在寅大統領になってからさまざまな不祥事が起き、大統領府および大統領そのものの関与が疑われる事件が多く発生している現実を見る時に、公正な裁判で明らかにされるのを期待するのは自然なことであり、民主主義国家として司法の健全な働きが国民の前に示されなければならないと考えることは、極めて理にかなったことです。

 しかしながら、何か不祥事が起きるたびに、事件の真相を究明しようとする検察側と大統領府が鋭く対立し、公正な裁判を開くことができない事態がしばしば生まれる構図を人々は見せつけられることになります。一体、どうなっているのか。

 朴槿恵氏を弾劾した後の大統領選挙での世論調査の不正で有罪となったドルイドキング事件(有名ブロガーのハンドルネーム)において、明らかに文在寅候補は事実上の共犯でした。

 蔚山市長不正選挙も、大統領府が関与した指示により、選挙不正が企てられ実行されました。文在寅大統領の補佐および参謀など13人が起訴され、追加起訴も予定されています。

 青瓦台の大統領府は、民間人を不法査察したり、職権乱用を振りかざしたり、犯罪の隠蔽(いんぺい)、証拠隠滅、側近たちの巨大金融詐欺など、とにかく不法行為が目に付きます。これは文在寅政権が大韓民国と国民をだまし、その富を略奪しているとしか思えません。

 国会の人事聴聞会を完全に無視したり、時効が成立した事件を超法規的に調査することを命じたり、国軍機務司令部(軍の情報収集・防諜部隊)がクーデターを企画したと捏造(ねつぞう)したり、その結果、元機務司令官の李載壽将軍を死に追いやったり、文在寅大統領の法を踏みにじるやり方は、度が過ぎています。

 当然、業を煮やしているのは検察であり、何よりも検事総長の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏であったことは周知の事実です。

 大統領および大統領府の目に余る犯罪性を捜査しようとすると、徹底的に妨害し、尹検事総長を身動きできないようにする作戦に出ます。
 最後には、辞任に追い込むという圧力作戦が功を奏し、実際に3月4日、尹検事総長は辞任します。

 文在寅政権は、法にのっとった犯罪捜査を行う権限を剥奪しており、検察は完全に干された状態に置かれていると言っても過言ではありません。
 これでは、法に違反したあらゆる犯罪的行為を大統領および大統領府は思う存分に行うことができると宣言しているようなものです。

 文在寅政権は都合の悪いことを見逃し、大統領の意向に沿う捜査しかやらないような不正協力型の検事総長がお望みなのでしょうか。行政府と司法が全く独立性をなくした癒着状態にしたいのでしょうか。
 とにかく文在寅政権の政治感覚は、独裁的で抵抗勢力をつぶす勢いが半端ではないことだけは確かです。

 辞任した尹錫悦氏の動向が気になります。
 2022年の大統領選挙は、文在寅と尹錫悦の戦いになるのでしょうか。二人の対立は、大統領選挙で決着が着くというシナリオになっているのでしょうか。
 神のみぞ知ると申し上げておきます。