世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

1回 恐るべき北朝鮮外交力と日米の結束

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 「世界はどこに向かうのか ~情報分析者の視点~ 」は、毎週火曜日の配信を予定しています。前週の内外情勢のポイントとなる動向を分析、解説するコーナーです。

 3月25日~4月1日を振り返ります。佐川宣寿(のぶひさ)元理財局長の証人喚問(27日)やロシア対欧米の外交官「追放戦」などがありましたが、やはり北朝鮮・金正恩朝鮮労働党委員長の電撃的な中国訪問(25日~28日)と首脳会談についての分析をお伝えしなければなりません。

 まず、働きかけは北朝鮮からで、理由は米朝首脳会談への備えです。日本政府にとっては「寝耳に水」でした。
 石原慎太郎氏は、金正恩氏を「端倪(たんげい)すべからざる人物」と30日のテレビ番組で語りました。容易に計り知ることができない能力を持った人物であるとの評価です。
 外交において独裁国家には勝てないと、或る著名な警察官僚経験者が語っていたことを思い出します。相手の弱点を突いて一気呵成に攻め込むのです。
 韓国の弱点は平昌五輪を「平和五輪」とする焦りであり、中国の弱点は北朝鮮の核・ミサイル開発への対応を日米に主導されて蚊帳の外に置かれ、さらに「分の悪い」米中貿易戦争が始まり、立場が揺らいでいたことです。
 北朝鮮は、両国の弱点を逆手に取り、南北首脳会談の約束と中朝首脳会談の実現を勝ち取ったのです。今後はロシアに向かうでしょう。
 これで、米朝首脳会談が決裂しても米国の武力行使は困難となり、「中国、ロシア、北朝鮮」対「米国、日本、韓国」という新冷戦構造に周辺諸国を巻き込むことができる。さらには自陣営に韓国を取り込もうと考えているのでしょう。

 この構造を崩すことができる現実的力を持っているのは米国です。米国が主導する対北朝鮮経済制裁は、中国、ロシア企業にも及ぶからです。今月半ばの日米首脳会談が非常に重要、安倍晋三総理の役割が極めて重要になってきました。