子育て道しるべ 22
青年期

(APTF『真の家庭』168号[10月]より)

須永孝子

何のために働くのか?

 働くということはその会社や地域の人々のために、自分の趣味や夢や特技、専門性を生かして、社会に役立つために働くものだと思っていました。しかし最近はそうでない人が多いようです。「何のために働くのか?」と尋ねると多くの人から「生活のため」「欲しい物を買うため」「旅行に行きたいから」という答えが返ってきます。

 入社時に「何のためにこの会社(仕事)を選んだのか?」と聞かれたら、社員の多くは自分のビジョン、夢を話し、会社にいかに貢献するかを話すことでしょう。実際に働いてみると期待していたような仕事でやりがいを感じる場合と、期待通りの仕事ではなく、むしろ悩むようになることもあります。また、社内の人間関係が良くてその職場が好きになってくる場合と、逆に人間関係で気を遣い逆に悩むようになることもあります。

 当然若いので、人間として未熟ですから悩みながら、努力していく中で仕事や人間関係にも慣れて一回り大きくなっていくのでしょう。しかしその壁を越えきれなくて苦悶する若者たちも多くいるのも事実です。

 最近は就職して12年で退職する若者が多いと聞きます。今は就職難ということもあり、彼らはすぐ職を見つけ正社員になることは難しく、多くは派遣社員やアルバイトとして一時の収入で生活するようになり、「生活のため」「欲しい物を買うため」「好きなアーティストのライブにいくため」「旅行のため」の仕事になっている青年が増えているようです。

世界観、人生観を学び、為に生きる

 森信三先生は「われわれが真実に生きるには、その人なりの世界観、人生観を持つべきである」と提言しておられます。ともすると若者たちはそのようなことは関係ないと思ったりしますが、人生百年と言われ、その人生をいかに生きるか? また親から受け継いだ家系、血統をどのように守っていくか? 生きてきた証しをどのように残すか? などは重要なことであると思います。

 30代、40代になって親が次第に老いていき、また、病気になったり、亡くなったりすると、自分のことだけ考えていればよいでは済まされなくなってきます。家族の絆、親族との関わりなど気を遣うことが多く出てきます。

 人生観、世界観、宇宙と人間の関係、人生の意義という内容を若い時からしっかり持っていたら、仕事をするにも、結婚するにも家庭を持つにも、そこに意義と価値を見出しながら生活できるし、いろいろな苦労があっても人生に悔いのない日々を送ることができるのではないでしょうか?